資料の電子化は欠かせません
紙の資料は保管と整理が大変
社労士の業務は社会保険の届出や助成金申請など、届出書・申請書のほか添付資料や手元に控えておくべき資料が非常に多いです。
各種の届出は届出後に記録のために手元に届出控えを持ちますが、紙で資料を持つことの難しさとして、第一に資料の保管スペースが物理的に限られていること、第二に資料を必要なときに取り出せるようにするための整理ファイリングに手間がかかることが挙げられるでしょう。
1回分の届出だけでも届出書類は添付資料も合わせるとそれなりの分量となりますので、届出控えをファイルに綴じていくといくら分厚いキングファイルでもすぐにいっぱいになってしまいます。
私の事務所はそれほど広いわけではないので、キングファイルを整理するスペースが十分であるとはいえません。そこで届出やそのほか業務に関する資料は基本的にすべてスキャナで電子化して管理保管し、紙の資料はできるだけ持たないようにしています。
資料を電子化すれば保管と整理が容易に
資料を電子化して電子ファイルとして保管する場合、保管場所については外部ハードディスクなどでほぼ無限に保管場所が作れますし、ファイリングについてはファイル名や作成日順に自動的にファイルを並び替えてくれる上にパソコンならではの強力な検索機能を利用できますので、先述した紙資料の問題2点の両方がほぼクリアされます。
もっとも電子化した資料がすべての面において優れているわけではなく紙の資料ならではの利点もあるのですが、士業のような個人事務所の場合にはとにかく保管場所に制限がある(要するに狭い)ので、保管場所の心配がなく検索が容易な電子ファイルが保管資料の中心になっていくのは必然と思われます。
電子資料はこんなふうに整理しています
それで私は電子化した資料を以下のように整理取り扱いしています。
社会保険の届出や助成金など紙の届出はすべてスキャナ(PFUのScansnapS1500を使っています)でとりあえずPDF化し、研修会資料など分量のあるものや冊子もページごとに切り離してできる限りPDF化します。
次にスキャンしたファイルにファイル名をつけますが、電子化資料取り扱いの最も重要なポイントはファイル名の付け方であると考えています。
私は電子ファイルのファイル名を「日付+企業名_書類名_対象者名」のようにしています。
例)「20191125大山産業_雇保資格取得届_山下一郎」
電子ファイルの強みである検索のためには検索の手がかりとなるタグを付けなければなりません。フリーソフトで個々のファイルに独自の検索タグをつけることもできますが、作業環境を特殊にしたくなかったので、ファイル名自体にタグとなる要素を入れこむ形となった上記に落ち着いています。
電子資料の弱点は「チラ見」ができないこと
ファイル名に4つ要素を入れると中にはファイル名が長くなるものも出てきますが、電子ファイルはファイル名だけで中身を判断しなければならないので、ファイル名には必ずこの4つの要素をいれるようルール化しています。
電子ファイルの弱点としてファイルの中身のチラ見できない、ということがあります。特にPDFやWordはファイルを開くまでに他アプリよりもわずかながら時間がかかるので、できれば不要なファイルは開きたくありません。なのでファイル名でファイルの中身が判別できることは非常に重要なのです(専門のSEの方からすれば異論反論・問題提起があるかもしれませんが…。現場意見としては同意してくださる方も多いと思います)。
大分類・中分類はフォルダで
上記のとおりにファイル名を付けた電子資料を、企業先別のフォルダをつくりそこに入れていきます。
一つの案件につき一つの電子資料一つで完了することはまずないので、例えば届出であれば、その付随資料・計算が必要なものであればその計算メモなど関連資料をまとめたサブフォルダをさらに作り、そこにまとめます。
フォルダの構造を示すと、
企業名フォルダ>案件別サブフォルダ>各種ファイル
といった感じです。
サブフォルダの名称は、ファイルとほぼ同じルールで「日付+企業名_案件名_対象者名」としています。
例)「20191125大山産業_雇保資格取得届_山下一郎」
フォルダは階層を作りすぎるとファイルが下の階層に埋もれてしまいわかりづらくなりますが、企業名フォルダ>案件別サブフォルダ>各種ファイル くらいの構造にしておけば目視だけでも必要ファイルを見つけやすいです。
「こうもりファイル」はショートカットを利用
資料の整理方法として著名な「『超』整理法」では、情報を分類する際にどこにいれてよいかわからないまたは複数の分類にまたがる「こうもり問題」が情報を分類する問題点として挙げられていました。
電子ファイルでも情報を分類する限り同じ問題が発生しますが、電子ファイルならではの強みとして「ショートカット」があります。
保管場所が複数フォルダにまたがるような「こうもりファイル」は、そのファイルがあってほしい場所、後で自分がそのファイルを探しそうな場所にはどんどんショートカットを置いて複数の場所から目的のファイルにアクセスできるようにすることで自分なりの解決としています。
電子資料の管理の要点は「ルール化」
上記のファイル管理方法にはありきたりで、なにも考えずとも自然とファイルを保存するときには「日付+書類名」として上記に類似したファイル管理方法をされていた方も多いのではないかと思います。
ここでお伝えしたいのは、ファイル管理の方法は「ルール」として徹底すべし、ということです。
実際に私も開業最初期からなんとなくファイル名を「日付+書類名」とすることを中心にして保管管理してきましたが、その当時の整理フォルダを後日あれこれ探ってみると、「なんとなくつけたファイル名はなんとなくしか思い出せない」のです。そのファイルを扱ったばかりで記憶が鮮明なうちは問題ないのですが、時間が経って記憶が薄れてしまうと、お目当てのファイルを探してそれらしい名前のファイルを開いたり閉じたりを繰り返すことになって目も当てられません。
パソコンで資料を管理する大きな利点である検索は、タグ付け、あるいはファイルの名付けがキーポイントです。ここが徹底されていないと、利点も活かしきれなくなってしまうでしょう。
電子資料でも「『超』整理法」級の管理方法を期待
今回紹介した電子ファイルの管理方法は運用の際にまだ迷うところもあるのですが、ファイルが行方不明になることは今のところほとんどありません。
電子資料は紙の資料と比べて物理的な保管スペースに制限されないこと、パソコンの強力な自動整理・検索機能を利用できることが非常に大きな利点です。
とはいえ、電子資料は情報の管理手段として決して100点満点ではないことは電子資料を扱う人全員が同意見だと思います。
紙資料の管理方法として画期的だった「『超』整理法」が出版されたのは1999年でわずか20年前のことです。それこそ何十年も取り扱われていた紙の資料ですらそんなですから、日進月歩である電子資料においてもこれから画期的な管理方法が出てきてもおかしくありません。
「『超』整理法」は今見てもすごい発想だと感嘆することしきりですが、同じくらい衝撃的な発想が電子ファイル管理方法でも出てこないかと密かに楽しみにしてもいます。